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横浜家庭裁判所 昭和36年(家)3326号 審判 1961年12月27日

申立人 内田喜一

主文

申立人の名「喜一」を「親吾」と変更することを許可する。

理由

本件申立の要旨は「申立人は、申立人法定代理人内田好久の妹の子であるが、申立人の実父母は申立人出生後間もなく不和となり、その結果実母は自殺を図るまでに到つたので、申立人法定代理人夫婦において申立人を引取り、昭和三十二年七月六日家庭裁判所の許可を得て正式に養子縁組をしたがその時以来申立人を親吾と呼んで現在に到つているから申立人の名の変更の許可を求める」というのである。

よつて本件記録に添付してある戸籍謄本、その他の各資料並びに家庭裁判所調査官の調査の結果を綜合すると申立人法定代理人が事件の実情として述べるところはこれを認めることができ、更に申立人が通称を親吾と改めた理由は申立人の実母が自殺を図つた際の遺書に「喜一は不幸な子だから名前を呼名だけでもよいから変えて育てて貰いたい」旨の記載があつたことに基き昭和三十二年七月六日養子縁組後通称として親吾を使用するに到つたものであることが認められる。従つて改名の動機は合理的なものとは認め難いが不幸な子の幸福を願う実母の真情と、これを諒として申立人を引取り正式に養子縁組しそれ以来約四年に亘り通称として親吾を使用して来た実績並びに改名による弊害不都合も認められないこと等を考慮すると本件は戸籍法第一〇七条第二項にいう「正当な事由」あるものと認められるので主文のとおり審判する。

(家事審判官 安達昌彦)

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